出発地である会津若松での出来事はこちら
夜半まで降り続いた雨も、目覚めた頃にはすっかり上がっていた。
月曜の朝、ホテルの前には制服姿の高校生やスーツ姿の会社員が忙しなく行き交う。
そんな中、前日に600km以上のロングツーリングを終えたXJR1200のチェーンに軽く注油してから、今日の旅路に備える。
福島の誇る三大山岳道路──磐梯山ゴールドライン、磐梯吾妻レークライン、そして磐梯吾妻スカイライン。どれもが高地にあり、走り応えと景色の美しさで名高いが、同時に「霧」と「寒さ」には要注意と事前に聞いていた。
ヒーターベストにバッテリーをセットし、インナーを重ね、気合いを入れてナビに目的地を入力。
早速、会津若松ICから磐梯河東ICまで東北道をわずかに移動し、絶景ワインディングの入口へと向かう。
磐梯山ゴールドライン──視界ゼロ、霧の中のワインディング
磐梯河東ICを降りると、すぐに「磐梯山ゴールドライン」の標識が目に入る。
しかし、進むほどに嫌な予感が的中。
山は濃い霧に覆われ、磐梯山はその姿をまったく見せてくれない。

下の方では新緑のトンネルが美しい。

だが標高が上がるにつれ、前方どころか自分のバイクすら霞むような霧の世界に。
幸いナビにコースを入れていたので、ブラインドコーナーでもコーナーの向きやRのきつさが予測できる。
視界が頼れない分、ナビと五感だけを頼りにバイクを操る。

最高地点は1194m──しかし、ここでナビの案内が終了する。
視界不良のため物足りなさを感じつつも、改めて次の目的地「磐梯吾妻レークライン」へ。
磐梯吾妻レークライン──慎重さを求められる路面コンディション
レークラインもまた、緑豊かで美しい道…のはずが、霧の濃さに加えて、路面に落ちる枝葉や苔に神経をすり減らす。


「走っていて楽しい」というよりも「気を抜けない」道のり。
慎重に走りながら中津川渓谷のレストハウスでトイレ休憩。

とはいえ、今日は三陸の山田町まで走らねばならず、長居はせずにすぐ出発。
ちなみに、オイルクーラーに鹿笛を取り付けてみた。

効果は未知数だが、東北の山中では備えあって損はない。

磐梯吾妻スカイライン──霧、そして奇跡

三本目の絶景道「磐梯吾妻スカイライン」に差しかかるも、ゴールドライン以上の濃霧に包まれ、ナビ頼りの走行が続く。
途中、下半身の冷えに耐えられずカッパのズボンを履く。装備がいかに大事かを痛感する。
そんな中、標高が上がったその先で、思わぬ奇跡が待っていた。
──霧が、晴れた。
突如として視界が広がり、これまで白一色だった風景が姿を現す。
標高1622m。

キャブ車でこの高さを走るのは可能なのか気になった時もあったけど、特に目立った異常もなく走り切った。
こちらが浄土平。

バイクを止め、小富士と呼ばれる丘へ5分ほど登る。

見渡す限りの絶景。


霧の中を走ってきた甲斐が報われた瞬間だった。
安心したのも束の間、下山を始めてまもなく再び霧に包まれる。
すでにカッパを脱いでしまった後だったが、止まれる場所もなくそのまま降りていく。
この後は福島大笹生ICから三陸道を北上し、山田町の港町へ。
次回【後編】は、道の駅ふくしまでの休憩、南三陸を通る中で目にした震災の爪痕、そして山田町の夜と温泉宿での交流の記録。