2日目の朝、前日の雨が嘘のように晴れて、あたたかな日差しに包まれていた。
まず向かったのは、学問の神様・藤原道真が眠る太宰府天満宮。
昔から一度行ってみたかった場所だったけれど、実際に着いてみると「こんなもんか」といった印象で、早々に後にした。
道中はさすがゴールデンウィークということもあって交通量も多く、いまいち気持ちよく走れずにいたが、阿蘇方面へ向かうにつれテンションは自然と上がっていった。
というのも、阿蘇山には個人的に少し特別な思い入れがあった。
「私たち(父母)も行ったことがあるんだよ」と母から聞かされていた場所。
けれど、私が物心ついた頃には父は自営業で多忙を極め、旅行なんて無縁だった。
思い返してみれば、ひょっとしたら両親の新婚旅行の頃の話だったかもしれない。
その話が妙に心に残っていて、今回どうしても行ってみたかった場所のひとつだった。
ところが、阿蘇への道はひどい渋滞で、バイクの利点を活かして進んでも中腹まで渋滞に巻き込まれた。原因は、なんと車が道から落ちていたことだった。
草千里展望台までなんとか辿り着いたものの、空いている時間にまた走りたくなって引き返し、ふもとの野営場(阿蘇町坊中野営場)に泊まることにした。
キャンプ場に着くと、すでにテントがびっしり。
夕暮れの光の中に立ち並ぶその景色は、どこか非日常的で、「こんなにたくさん人が集まってるのか」と圧倒された。

テントを設営して、近くの温泉でひとっ風呂浴び、食料とビールを買って戻る。
その温泉もまた味があって、地元の人が集まるような大衆浴場。
九州はどこへ行っても温泉に困らない。
気軽に入れて、旅の疲れを癒せる――これはキャンプツーリングにとって最高の条件だ。
湯上がりの体でキャンプ場に戻り、草千里展望台で出会った、指宿に住むゼファー400乗りの県職員さんと再会して、そのまま一緒にキャンプ場で飲むことに。薄明りのなか飲むビールの味は、ちょっとしたご褒美だった。
さらに、XJR1200に二人乗り+キャンプ道具満載でやって来ていた神戸のご夫婦にも出会った。

バイク談義に花が咲き、「積載どうしてるんですか?」なんて話題で盛り上がる。「テントを一番下に載せて、その上に私が座るんだよ!」なんて笑ってたけど、XJRでタンデムキャンプとは…ただただ驚き。
そんなとき「離婚って、結婚以上にエネルギー使うんだよね」
ビールを飲みながら、指宿の彼がふと漏らした言葉に、一瞬だけ空気が静かになった。
焚き火こそなかったけど、夜のキャンプ場に灯るテントの明かり、旅人同士のざっくばらんな会話、そして湯上がりの体に染みるビール。
旅の醍醐味って、こういう何気ないひとときに詰まってるのかもしれない。
予想外に充実した夜に、明日への期待がぐんと膨らんだ。
